スウェーデンの事実婚[サンボ制度とは]

スウェーデン

こんにちは、suzukaです。

突然ですが、皆さんはスウェーデンで一般的である事実婚『サンボ』というものをご存知でしょうか。

日本の事実婚とはまた違うの?

と思われるかもしれませんが、サンボは日本の事実婚とは異なる法的側面も持っています。

この記事を読むと

  • サンボの定義について理解を深めることができる
  • サンボへの法的措置を知ることができる
  • 日本とスウェーデンの事実婚の比較ができる

それでは、まずサンボの定義から見ていきましょう。

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サンボとは

「法律上の婚姻関係を結んでいない」カップル

サンボ(Sambo)は、Samboende(一緒に住む)という言葉が省略されたものです。

「一緒に住む」と言っても、同居していることに加えて「法律上の婚姻関係を結んでいない」カップルのみがサンボに当たります。

つまり、婚姻届を出しているカップルや、片方が他の人と結婚している、または友人や兄弟と共に暮らす場合はサンボとは呼ばれません。

Samboという言葉について

サンボは「カップルが一緒に住んでいる状態」を意味しますが、カップル自体を指すことがあります。

例えば、サンボの関係にあるパートナーを”Han är min sambo”(彼は私のサンボです)と紹介することができますよ。

サンボの権利を守る法律に、サンボ法(Sambolag)というものがあります。

サンボ法には、サンボの定義について、このように明記されています。

Med sambor avses två personer som stadigvarande bor tillsammans i ett parförhållande och har gemensamt hushåll.

2人がカップルとしての関係を持ち、永続的に同居し、家庭を共に築いている場合はサンボと見なされます(筆者訳)

出典元:サンボ法 第1条

「カップルとしての関係」って?「永続的に」って?

言葉単位に解釈の余地があり、サンボが何なのか詳細は定められていません。

一般的には、「永続的に」というのは少なくとも6ヶ月は共に暮らしていること、「カップルとしての関係」は性的な行為を含むことなどが考えられていますが、個々のケースによってサンボと見なされるかどうかは異なります。

更に、婚姻届を提出する法律婚に対して、サンボに関しては「彼が私のサンボだよ!」というようなことを役所に知らせるシステムがありません。

なので、一般的にはカップルが長期的に一緒に暮らすと、サンボとしての関係が発生すると考えて良いと思います。

次に、あるカップルがサンボの関係を持っているかどうかが焦点となった裁判をご紹介します。

性的行為のないカップルはサンボなのか

上記で、サンボの定義についてご紹介しましたが、つい数日前にニュースで「性的行為のないカップルはサンボなのか」という問題にまつわる裁判があったことを知りました。

以下が主な内容です。

2人の女性が同居、共に家庭を築き、お金の管理を共同で行っていました。

ある日、パートナーの女性が亡くなります。

彼女には320, 000クローナの死亡保険がかけられていました。(日本円にして約400万円!)

死亡保険には、第一優先順位に夫、パートナー、サンボが、第二優先順位に親戚と指定されていました。

ここで問題となったのが、2人が友人かサンボ、どちらに当てはまるのかということです。

本人と周囲から様々な意見が出ました。

友人 友人かサンボであるか意見が分かれた。
亡くなった女性の家族
性的行為のない関係で、友人として一緒に住んでいたことから2人は友人であると主張した。
パートナーの女性
2人は精神的に深い関係を持っており、性的行為がなくともお互いをサンボとして見做していたと主張した。

最高裁判所は、サンボ法によると「2人がカップルとしての関係を持ち、永続的に同居し、家庭を共に築いている場合はサンボと見なされる」こと、一般的に「カップルとしての関係」は性的な行為を含むことなどが考えられいることを提示した上で、以下のような考えを示しました。

性的行為は精神的に深い関係を持つものに付随する形で起こることが多い。そのため、性的行為は絶対的なものではなく、性的行為がなくとも「カップルとしての関係」を築くことができるとし、法律上の婚姻関係を結んでいるカップルと同様の密接な関係が、サンボ法で意図される「カップルとしての関係」である。

このような見解によって、パートナーの女性はサンボに当たり、死亡保険金を受け取る権利があるという結果に至りました。

以下のページで詳細をご覧になれます。
Aftonblandet/HD: Par utan sexliv räknas ändå som sambor

2003年の新サンボ法(Ny sambolag)には、同性愛者にも焦点が当てられ、性別問わずサンボ法が適用されることが明記されています。
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サンボの割合

それでは、サンボという関係はどれほど一般的なものなのでしょうか。

平成25年版厚生労働白書―若者の意識を探る―にて、スウェーデンの事実婚の割合が紹介されています。

古いデータですが2002年度には、法律婚、事実婚、単身の比率で見た場合、スウェーデンは35.4%が事実婚ということが示されていました。

残念ながら、最新のデータを確認することができなかったのですが、サンボは法律上の婚姻関係を結んでいないが同居しているカップルとして、日本の同棲カップルと形態に変わりはないので、日本でいう事実婚よりもハードルが低く割合は高いと言えるでしょう。

尚且つ子どもを持つカップルでも結婚していないことは珍しくないです。

同資料では世界各国の*婚外子の割合が紹介されています。2008年の婚外子の割合は日本は2.1%に対してスウェーデンは54.7%であり、スウェーデンでは生まれてくる子どもの2人に1人が未婚の母を持つということが分かります。

*婚外子 法律上の婚姻関係にない男女の間に生れた子ども

この婚外子率の数値から、サンボが一般的であることが推測されます。

日本では、まず結婚してから子どもを生むというプロセスを踏むのが多数派なのに対して、スウェーデンでは結婚してから出産、出産してから結婚、または未婚のままなど様々なカップルの形が見られます。

以下では、なぜスウェーデンではサンボがこれほど一般的なのか、サンボの法的措置を交えてご紹介します。

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サンボの法的措置

サンボ法(財産分与)

サンボ法は1987年に、サンボ関係にあるカップルの中で経済的に弱い立場にある者を守るために執行されたものです。

サンボ法ではサンボが解消された場合の財産分与について扱っており、カップルが共同で取得し所有しているものや価値を2分の1に分けることが定められています。

例えば不動産や家具、家電など共同で購入した場合などは、お互いが平等に支払ったかどうかに関わらず、均等に財産分与がなされます。

それでは多く払っている人の方が不公平では?

つまり、サンボ法は平等性を保つために作られていますが、個々のケースを見るとサンボ法は最適な方法ではないかもしれません。

そのような場合には、サンボ契約(Samboavtal)というものを利用すると、サンボ法を無効にし、自分たちでどのように財産分与をするかを決めることができます。

相続権は自動的に付与されないので、サンボであるパートナーに相続したければ遺言を作成する必要があります。

Sambolag https://www.riksdagen.se/sv/dokument-lagar/dokument/svensk-forfattningssamling/sambolag-2003376_sfs-2003-376

親子法(共同監護・養子縁組)

親子法(Föräldrabalk)は子と親の関係の権利を確保するためのもので、サンボカップルの監護権や養子縁組についても触れられています。

まず監護権に関してですが、出産時点で母親が未婚である場合には、原則として母親に監護権が渡ります。しかし、カップル双方の合意により共同監護権を獲得することが可能です。

養子縁組に関しては、2018年9月に親子法が改正された際に、養親としてサンボの関係を持つカップルは共同監護のもと養子を受け入れることができるようになりました。

そして、双方の合意のもと、パートナーの他の相手との子どもを養子に受け入れることが可能で、パートナーの子どもと言えども共同監護を行うことができます。

Föräldrabalk  https://www.riksdagen.se/sv/dokument-lagar/dokument/svensk-forfattningssamling/foraldrabalk-1949381_sfs-1949-381#K4

なぜサンボが一般的であるのか

上記でも分かるように、サンボと言っても法律上の婚姻関係を結んでいるカップルと同じくらいの手厚い法的措置が取られています。

全く保証がされていないのは、相続権くらいでしょうか。

日本の事実婚との相違点はというと、

  • 日本では原則は母親が単独親権を得るが、スウェーデンでは共同監護が可能である。
  • 日本にあるような戸籍制度がスウェーデンにはないので、経済的不利益を被らない。(ex. 日本では事実婚の場合、配偶者控除を受けることができない)

と言ったことが挙げられます。

興味深いですね・・・・。

日本で事実婚を選択する方の中では、主に「旧姓」を残したいという理由が多く見られますが、スウェーデンでは結婚をしても夫婦別姓の選択が可能です

サンボ制度では財産分与や共同監護などの様々な権利を得ることができ、結婚をしなかったことが原因で不利益を被るということは、あまりなさそうです。

2.サンボの割合でも紹介した通り、日本の婚外子率2.1%、スウェーデンの婚外子率50%以上と大きな差があるのは、このような法的措置の違いから生まれていることが考えられます。

加えて、結婚を焦る必要がなく、ゆっくりとパートナーとの関係を築けることもサンボ制度の良いところかもしれません。

日本の事実婚制度については、こちらを参考にしました。Festaria/事実婚のメリット・デメリット。後悔しないために事前に決めておくべきことは?

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まとめ

以上、スウェーデンの事実婚サンボについてご紹介しました。

「事実婚」と言っても、日本とは全く異なるシステムがあることが分かりました。

皆さんは日本とスウェーデンの事実婚について、どのような考えをお持ちですか。もし他にも注目するべき点などがあれば、ぜひ教えてください。

本記事をお読みになっていただきありがとうございました。Tack och vi ses!

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